海外の認知症施策紹介 Vol.4

文/臨床心理士 太田一実

オランダの各地域には、認知症の人にボランティアの仕事を積極的に提供するプログラムがあります。Demen Talentと呼ばれるこの取り組みを紹介します。

 Demen Talentはオランダの約20の地域で2015年頃から始まりました。この取り組みは、地域の企業や地方自治体が認知症の人の能力や興味に合わせてボランティアの仕事を提供するというものです。まず、ボランティアの仕事を希望する認知症の人がインタビューを受け、その中で自分の得意なことやどのような分野に興味があるのかを担当者と話し合います。その情報を踏まえて、その人に合ったボランティアの仕事が提案されます。ボランティアの仕事は一人でやることもありますが、数人のグループで行うこともあります。
 ボランティアの仕事の種類はさまざまです。例えば、ビルの修理やメンテナンス、清掃作業、フットボール場やテニス場の整備、介護施設やレクリエーション施設の清掃、音楽演奏、植物園や農園での作業、動物の世話、小学校での本の読み聞かせ、人形作り、高齢者の住まいに警報器を取り付ける、学習障害の生徒のサポート、学生食堂の手伝い、図書館の手伝い、会計処理、お店の手伝いなどがあります。
 参加者からは、自分の希望するボランティアの仕事が選べるのがとても良いと高評です。また、地域の人たちとの新しい交流が生まれることもあります。小学校でボランティアの仕事をしている男性高齢者は、街を歩いていると小学生に大きな声で挨拶をされるようになったそうです。なによりも、認知症の人がボランティアの仕事を通して社会的な役割を持つことで、自信や生きる意味を再び獲得できることが大きな効果でしょう。
 認知症と診断されても、特に軽度の人たちができることはまだまだたくさんあります。その能力を生かすことができれば、地域の人たちにとっても利益となります。また、認知症の人たちと一緒に働くことで、認知症ではない人たちが認知症に関する間違った認識や固定観念を取り払ういい機会になるといいます。例えば、介護施設で認知症の人がボランティアの仕事をすると、そこで働く他のスタッフは認知症と診断されてもまだ多くのことができるということを知り、それまでとは違った視点で認知症や認知症の人を見ることができるようになりました。また、学校で認知症の人がボランティア活動をすることで、子どもたちは認知症の人との交流を通して自然と認知症について学ぶことができます。


ホームページ http://www.dementalent.nl/

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臨床心理士/太田一実 Kazumi oota

臨床心理士